<まちビズ最前線>
朝夕のラッシュ時でも確実に座れる通勤列車が首都圏で広がりを見せている。運賃のほかに指定席料金が数百円から必要になるが、鉄道各社によると、「密」を避けたい乗客のニーズが強まり、新型コロナウイルス禍でも一定の乗車率を維持。感染が比較的落ち着いてきた現在は、一部の列車で満席になるなどコロナ以前の活況を取り戻しつつある。(妹尾聡太)
◆電源コンセント、ひじ掛け備え
11月末の午前8時すぎ。東武鉄道久喜駅(埼玉県久喜市)発、東京メトロ日比谷線直通の「THライナー」に乗車した。コロナ禍の昨年6月にデビューした新顔だ。日中はよく見る通勤型電車だが、全席指定のTHライナーとして走る際には6人掛けロングシートを3分割、回転させて2人掛けシートに変える。
各席にはコンセントやドリンクホルダー、ひじ掛けが備わり、足元もゆったり。晴れた日は右手に遠く富士山を望む。乗客は新聞を広げ、コーヒーを飲むなどリラックスした様子だ。ノートパソコンのキーボードを打つ音も聞こえる。
◆都心までゆとりを確保
久喜駅から東京新聞の社屋最寄りの霞ケ関駅まで、直通で所要時間は約1時間20分だった。過密ダイヤの合間をぬうように走るため、さすがに特急並みの速さとはいかないが、ゆとりを確保したい人には指定席料金(今回は680円)分の価値を見いだせそうだ。
◆沿線価値の向上狙う
「座りたい」という通勤・帰宅客の要望に応える全席指定列車は各社が展開=図参照。「TH」のように通勤型の車両を活用するほか、小田急電鉄のロマンスカーなど特急車両を通勤向けに運行するケースもある。少子高齢化で利用客が減る中、多様なサービスを用意することで「沿線の価値を向上させる」(東武)効果を目指している。
東京新聞 2021年12月12日 06時00分
【首都圏】プラス数百円でも「密」避けたい 広がる指定席通勤
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