3G停波で増加する「スマホ持ってるだけ難民」 周囲の人々の困惑は続くのか

1 かわる ★ :2021/11/27(土) 22:05:27.39

「全然使い方がわからない、説明書も入っていない。年寄りだと思ってこんなものを売りつけるのか」
 九州北部にあるとある携帯電話販売店に怒鳴り声が響く。声の主は70代の男性で、その傍らには男性の妻と思われる高齢の女性が佇んでいた。男性が振り上げた手に握っていたのは、妻が最近購入したばかりの「スマホ」だ。接客をした女性従業員・柏木宏美さん(仮名・40代)が振り返る。
「いわゆる『ガラケー』が本年度末で利用できなくなるので、ご使用されているお客様には順次、買い換えをご案内しているんです。女性のお客様にもそういったご案内をして、しっかりご説明を差し上げた上でお買い替えいただいたのですが、思っていたような使い方ができなかったようです」(柏木さん)
 スマホに限らず、最近の電化製品には取扱説明書がない、あったとしても極めて簡素なもので、詳しいことはネットで公開ということが多い。最新家電に慣れ親しんでいる若者であれば問題ないのかもしれないが、ガラケーからスマホに買い換えたばかりの高齢者にとっては、手に取ることができる説明書がないのは致命的だ。ガラケーから姿形がまったく異なるスマホを説明書もなしに使えなど、無理難題というものだ。そのうえ、ガラケーで使っていた電話やメールのやりとりを、同じようにできないとなれば苛立ち怒りを覚えてしまうのも無理ないことかもしれない。
「買い換えられたお客様の多くが、使い方がわからないとおっしゃります。ただ、それに全て応じていると、いくら時間があっても足らない。ですから、有償で設定などのサポートサービスを各店舗で行っているのですが、そういったサービスはご利用されない方が多いんです」(柏木さん)
 もちろん、販売店等で無料の「スマホ使い方講座」も実施されている。しかし、決められた時間割から選んで予約を申し込まねばならず、「金を出して買ったのに、まだ手間がかかるのか」と敬遠する高齢者は多い。有料のサポートサービスも同じで「また金がかかるのか」と憤慨する客も少なくないという。
 金がかかるのが癪なのか、それとも公衆の面前で恥をかきたくない、そんな心理が働いているのかは定かではないものの、行き場を失った「スマホ持ってるだけ難民」の高齢者たち。実際は、その難民には中高年も少なくないのだが、彼らはあらゆる場所で、スマホの使い方について「尋ねまくって」いる。
「60代の上司が最近やっとスマホに買い替えたというんですが、パソコンと違って操作方法が全くわからないと、一日中部下に聞いてまわっている。部下はいちいち仕事を止めて説明せねばならず、そんな上司がもう二人ほどいるもんですから、大変です」
 都内の中堅食品会社勤務・福田明子さん(仮名・40代)の会社では、トップの会長(70代)を始め、高齢の役員クラスが最近になって、ガラケーからスマホに買い替えた。そろって「パソコンをやっと覚えたばかりなのに」と愚痴りながら、部下にスマホの使い方を聞くのだが、苛立っているからか、質問する側なのにだんだん詰問口調になるという。
「バスの中や駅でも、高齢者が使い慣れないスマホを片手に、運転手や駅員にスマホで乗り換え案内をして欲しいとか、千円差し出して『スマホに入れて(入金して)』と迫っているのをみたことがあります。部下の我々もイライラしちゃって、良くないなとは思っているんですけどね。上司だから質問を受け付けるのを断れないし、仕事の効率がだいぶ落ちました」(福田さん)
 「はっきりいって、(スマホを)売ってしまえばそこまで、というのが最近の販売店の姿勢です。アフターサービスも全部ネットですし、若い方だと、そもそも販売店に来られず全部ネットで完結される。でもご高齢の方は対応できない。対人で教えてもらおうと訊ねると、我々が教えるのは有料です、となれば反発したくなる気持ちもわかる」
 筆者も以前、ある携帯電話販売店で、販売員がどう考えてもオーバースペックであろう機種を、高齢老人に進めている様子を目撃したことがある。老人は黙って、言われるがまま書類にサインをしていた。押し売りのようだと非難され、以前よりは露骨な販売方法はなくなったと言われるが、そういった悪しき業界風習の名残もあるのかもしれない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d1ac664edbcec84b1d5947157c640ef8691eb1d5?page=1