新型コロナウイルスの感染が子どもにも拡大する中、九州各地で新学期がスタートし、学校現場は対応に苦慮している。各地の教育委員会は夏休み延長や授業短縮などの対策を新学期直前に打ち出したが、教員や保護者からは「どれだけ効果があるのか」「仕事の調整が難しい」などと不安や戸惑いの声が渦巻く。
「夏休みに楽しかったことも、コロナでできなかった残念なことも、友達や先生と話し合ってください」。26日午前、北九州市若松区の若松中央小。奥理映子校長は、各教室にあるモニターを通して全校児童に呼び掛けた。リモートでの始業式は最近では珍しくないが、市内の小中学校は9月10日まで授業時間を短縮するなどの対策を追加する。
密集を避けるための時差登校、部活動の中止…。学校は対策に知恵を絞る。
熊本市の小中学校では学年ごとに対面授業とオンライン授業に振り分ける。市内の小学校教頭は「普段から準備をしていたので対応できる」と自信を見せる。
一方、家庭環境の違いに配慮してオンライン授業を見送る地域も。中学2年の娘がいる
久留米市のパートの女性(47)は「環境が整っている家庭から始めるなど柔軟に取り組めないのか」と疑問を呈する。福岡県のある市教委職員は「保護者からの要望は休校から対面授業までバラバラ。どれが正解か分からない」と頭を抱える。福岡市の中学校長は本音を打ち明けた。「いくら対策をしてもリスクをゼロにはできない。学校に生徒を集めること自体に怖さを感じる」
厚生労働省によると、25日までの1週間に全国で確認された20歳未満の感染者は3万427人で、第4波で最多だった5月中旬の5倍を超えた。九州では7月以降、学校でのクラスターが相次いで発生しており、危機感は強まる。
福岡県内の公立中に娘が通う女性(50代)は自身のワクチン接種の予約が取れていない。「学校から家庭に感染が広がって家族が重症化するのが怖い」と不安を募らせる。大分市の会社員の女性(39)は小学4年の長男にぜんそくがあるといい、「登校させるのも心配だが、昨年の休校期間はストレスをため込んだので、また家にこもりがちになるのも心配だ」。
急な臨時休校や短縮授業の決定に、仕事を抱える保護者には困惑も大きい。福岡県那珂川市の会社員の女性(40)は「会社を早退しないといけなくなる」。同県筑紫野市のパートの女性(50代)は「子どもが学校に行けないと仕事ができず、収入が減ってしまう」と不安を口にした。 (平峰麻由、西村百合恵、井中恵仁、下村ゆかり)
塾や学童も対策を
長崎大の森内浩幸教授(小児感染症)の話 デルタ株の感染力は強いので油断はできないが、子どもが特に感染しやすくなったというよりは、ワクチン接種が進んだ高齢者の感染が減ったので若い年代が目立っている。多くの学校はきちんと対策をしており、比較的安全な場所だ。休校措置を取っても、密になりがちな学童保育や学習塾で過ごす時間が長くなれば、逆効果になる恐れがある。子どもが過ごす場所全体で対策を講じ、体調チェックや換気、不織布マスクの着用を徹底するのが効果的だ。
西日本新聞