(出典 www.mbs.jp)

 【まん防】会食時に口元を覆うために「うちわ32万本配布」を発表した兵庫県に「税金の無駄遣いだ」と批判噴出

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https://dot.asahi.com/dot/2021041300020.html

感染者の急激な再拡大により、4月5日から「まん延防止等重点措置(まん防)」が実施されている兵庫県。
同県が会食時に口元を覆うために「うちわ32万本配布」を発表したことが「税金の無駄遣いだ」と物議を醸している。

しかもこの施策を決めた行政プロセスにも疑義が生じており、同県の対策本部会議に出席した専門家からは
「まったく相談なく決まった」と批判の声も上がっている。

*  *  *
 9日、兵庫県の井戸敏三知事は記者会見で「まん防」の対象区域となった神戸市など4市内の約1万6千店舗に、
1店舗あたり約20本ずつうちわを配布すると発表。会食時にうちわで口を覆う「うちわ会食」を呼びかけた。


「グループだと会話が弾む。扇子でもハンカチでも、なんらかの対策をしてもらえれば」

井戸知事は狙いをこう説明したが、報道陣から「うちわ」の科学的な根拠を問われると
「フェースシールドがOKならば、飛沫感染防止でうちわや扇子もOKなはず」と述べただけだった。

このニュースが報じられると、SNSでは「誰も止めなかったのか」「税金の無駄」
「思考が停止しているとしか思えない」
など批判の声が相次いだ。同日には「うちわ会食」が
Twitterのトレンドに急浮上し、にわかに“炎上”状態となった。

県防災企画課の担当者によれば、うちわ32万本の配布に使う予算は、約700万円だという。だが、科学的根拠について問うと、

「コンピューターでシミュレーションをしたわけではないので、科学的な裏付けがあるわけではありませんが、
何もないよりは軽減できるのではないか」


と知事と同様にあいまいな返答をするのみだった。

担当者によると、うちわの配布は専門家を交えた4月9日の対策本部会議で決定したという。
だが井戸知事は9日の会見で、「(委員からは)『うちわなんかを使って会食するような段階ではない』という意見が出た」とも述べていた。

どのような議論をへて、うちわ配布は決定されたのか。

「実は県からは、何も相談がなかったんですよ」

 こう語るのは、委員として対策本部会議に参加した有識者の一人だ。この委員によれば、会議の時にはすでに参加者の机上に、
現物のうちわが配られていたという。9日の会議時点では「うちわ32万本配布」はすでに決定事項として、県から説明を受けただけだった。

「まともに感染防御を考えている識者ならば、賛成する人などいません。あのような小さいうちわでは飛沫が飛び散り、
防ぐことなどできませんから。これから暑い季節になってうちわが手元にあれば、あおぎたくなるでしょうし、
あおいでしまったらむしろ逆効果です。完全にアイデア倒れであり、勇み足だと思います」
(同)

 配布するうちわの数は、各飲食店に約20本ずつ。この数に根拠はあるのだろうか。

「何も相談がなかったのでわからない。普通に使ったら、20本なんてすぐに使い切ってしまいます。
消毒して使いまわしたところで、安全とは言えません」
(同)

 さらに委員はこう主張する。

「誤解してほしくないのは、会議の場でうちわの配布について議論したわけではないということです。
病床の確保や自宅療養転換に対する議論が本題で、普段は県も各団体から、かなりきめ細かく意見を聞いています。
今回のうちわに限っては、県の勇み足で、おそらく知事の独断で決めたこと。兵庫県ではこんなことを議論しているのかと思われたら心外です」


 9日の対策本部会議では、「うちわ配布」について本当にきちんとした議論がなされたのか。県に改めて問い合わせるとこう回答した。

「会議の場で配ったうちわはあくまでもサンプル。ご説明をして、委員から大きな反対の意見が出なかったので決まったと聞いている。
会議の様子を見ていたわけではないので、詳しくは分からない」
(担当者)

うちわは4月15日頃から順次配られる予定だ。「うちわ会食」が“アベノマスク”のような愚策にならないことを祈るばかりである。