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【野球】元オリックス長谷川 甲子園は炎天下で死者が出るまで変わらない

長谷川滋利氏は、東洋大学附属姫路高校時代に3度甲子園に出場し、立命館大学を経てオリックス・ブルーウェーブに入団。先発投手として6シーズン過ごした後、メジャーリーガーとなり、アナハイム・エンジェルス(現ロスアンジェルス・エンジェルス)で5年、シアトル・マリナーズで4年プレーした。長谷川氏は2020年の夏の甲子園が中止されたことをプラスに捉えるべきだ、と語った。


「甲子園で活躍したスター投手の大半が、その後の野球人生でケガに苦しみ、肘や肩にメスを入れています。無論、それは連投や連戦に起因するものです。僕も高校時代は、毎日500球くらい投げることもありました。500球を1週間連続なんていうメニューでした。大会が始まったら、予選では、まずブルペンで60球投げて、ゲームで100球以上投げる。だから1試合で200球から300球投げなければいけない。そのためには、一日に500球投げておくべきだという考え方だったんです。当時は、それがおかしいとも感じませんでした。箸が持てなくなったこともありました」

その結果、30歳くらいになってから肩の痛みに悩まされることとなる。

「肩は消耗品です。ドクターによっては、『肩は一生のうち、投げられる球数が決まっている。無駄な球数使ってどうするんだ』という方もいるほどです。僕の場合は軟投派だったので、まだ良かったのですが、ストレートを主体とする本格派がそんなことをしたら、間違いなく故障に繋がります。本来ならメジャーで15年やれる投手が、10年くらいで終わってしまう。年間10億円以上稼げた選手なら、それをあなたたち補償できますか? という話ですよ。甲子園に人生の全てを懸けて、擦り減らせる必要はないんです。10代で大きなプレッシャーを感じながら大舞台で投げることに、少しはプラス面もあるでしょうが」

とんでもないことが起こって初めて変化が生まれる
シニアプロゴルファーとしての長谷川氏


長谷川氏は引退後も米国カリフォルニア州に住み、シニアのプロゴルファーとして研鑽を積みながら、オリックス・バファローズのシニアアドバイザーを務めている。

「今日、プロ野球でさえ、100球投げたらピッチャーは交代します。僕が仕事をしているオリックス・バファローズもそうです。もちろん、100球を超えると打たれるということもありますが、ピッチャーの肩を守る意味で当然のことです。どの球団でもプロのエースが1試合で100球くらいしか投げないのに、高校野球だけが未だに150球、多いケースなら200球も投げている。なおかつ連投している。

誰もが悪いって分かっているんですよ。それなのに、やらせてしまう。過密スケジュールで甲子園が行われるということが歴史として続いており、まったく見直すことができない仕組みになっているんです。今まで続いて来た伝統が、正しいか否か検証しないことが一番の問題だと思いますね」


現場の人間が、悪しき伝統だと理解しながら改善策を見出せないのが甲子園なのだ。
 
「高野連にも知り合いがいますから、そういう人たちに問題点を指摘しても『その通りだ』とは言うものの、変えられないというシステムです。僕も最初は変えようと一生懸命考えましたが、色んな人の話を聞くたびに、これは変わらないなと感じました。歴史とか社会の体質が尾を引いているからなのでしょう。日本の場合、法律的強制力がありません*。

ですから、炎天下でやるのも、死人が出るまで続けるの? ということなんですよ。仕組みっていうのは、とんでもないことが起こって初めて動き、変化が生まれるでしょう。それが日本のやり方なんですかね……」


以下
https://news.yahoo.co.jp/articles/60fa3f7440011683c769036931dde3e90604ba92